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小宮と犬養 不良高を舞台にした学校モノ(イタい系) BL・ノマカプ・百合がまぜこぜなカオス展開 この小説は若干の暴力表現、性表現を含むため 15歳未満の方はお読みになれません。 義務教育を終了されていない方はお戻りください。 -------------------------------------------------------------- 部屋のすみに水槽が置いてあった。 中は見えない。水は緑色に濁っていたし、少なくとも魚が棲んでいそうには思えなかった。水槽を見ていると、なんとなく安心した。ガラスにこびりついた緑色のコケが、外界から全てを遮断していた。あの小さな死の世界に私は憧れた。水の中で、小さく体を丸めて眠る自分自身を私は空想していた。 「佐藤さん?」 だから、すぐに返事ができなかったのも反抗していたからじゃない。 「佐藤さん!」 現実に戻される。 「はい!」 「大丈夫ですか?」 校長先生は、優しく声をかけてくれた。優しいけれど、気の弱そうな人だ。 「すみません。大丈夫です…」 私は答えた。 私にとっての現実とは、こうである。私は、ちょっとした問題を起こして前の学校を追い出された。引っ越しをしたくなかったので、近場の高校を探したところ、ここ以外に選択肢がなかった。敬坂第一高校。略称は゛ケーイチ゛で、この辺りでは有名な高校だ。名前を聞けば誰でも恐怖におののくというタイプの「有名」だけれども…。今時の日本には珍しいくらいの、典型的な不良高校。でも、どうでもよかった。高校自体大して行きたくなかった。しかしそれを主張することすら面倒だった。 「大丈夫ですかね…」 校長先生は不安そうにしていた。 「いじめに遭ったら、すぐ私に相談してください。いや、多分、あると思うんですけど…」 どうでもよかった。 「大丈夫です。おとなしくしてますから。」 「絶対、言ってくださいね?」 「わかりました」 私はニコリと笑った。16年間も生きていれば、誰でも愛想笑いのひとつやふたつ覚えることができる。私はいま、小さな貝だった。貝殻の表面に、愛想笑いをぺたぺたとはりつけていた。私はいま海の底にいた… 「ニュースにゅうぅうーーす!!」 ガアン!と乱暴に扉が開いてスキンヘッドの男がとびこんできた。 「んだやうっせェな!」 「転校生が来るらしいでありますよ軍曹殿。この2−Aに」 「てんこーせー…マジどーでもいーわ。」 「女であります。」 クラスメートの目がチカッと光った。 「…美人とはかぎんねぇし。」 「これはあくまでオレの主観だけど、」 スキンヘッドの鼻息が荒い。 「結構カワイイ系じゃないかなと。つまり、オレの好みだった。」 「見たのかよ」 「見た!」 「…けどオメーの好みなんか知るかよっちゅー…」 「……」 「誰似だ」 「げーのうじん?」 「で」 「んー…」 「誰っぽい?」 「ガッキー…」 「ガッキー!!!!!!????」 「…をブスにして少しぽっちゃりさせた感じ?」 「ガッキー…か…」 「……」 「結局、その女はブスなのかカワイイのかどっちだ?」 「カワイイって」 「え?なに?」 「おい、真田ッ、クラスにガッキーが転校生で来るってマジかよ!?」 「来ないよ!」 「おいテメ来るっつっただろが!ウソかよクソが!!」 「いや、転校生は来ます」 「ガッキーにクリソツなんだよな」 「クリソツとは言ってねーけど…オレだってチラッと見ただけだし。てゆーか全然似てなくても殴んないでねお願いします」 外から声が聞こえた。 「来た!来た!」 「転校生?」 「そう。女!今教室に来る!」 「マジか」 「とくりゃ」 「やることはひとつ」 「黒板消し?」 「小坊かっ」 「テーバンの」 「もっとおもろいコトねーのかよ」 「バカ。想像してみ?ガッキーが白い粉被って目を潤ませているところを」 「…ボッキモンだな」 「実行係!早急に準備を整えよ」 「テメーがやれ」 不幸な男がいた。彼は今日、珍しく遅い時間に登校してきた。その理由は、駅で気分が悪そうにしていたお婆さんを駅の医務室まで連れていったから、である。奇跡のような良い子だ。彼は朝、電車で優先席の前に立っていた。もちろん、携帯電話の電源を切って。右手に吊革を持ち、左手に単語帳を持って、朝の通学時間を勉強に利用していた。横に女性が立った時、体が密着しないように少しだけ体をずらした。そして彼は異変に気がついた。斜め前に座るお婆さんの顔色が悪い。彼は、次の駅に着く直前にお婆さんに声をかけた。 「おばあちゃん、もしかして具合悪かったりします?」 返答はなかったが、お婆さんは顔を上げて目でうなずいた。彼がお婆さんを抱えて駅で降りると、お婆さんはすでに相当ぐったりしていた。駅員にも手伝ってもらって医務室に連れて行くと、彼はさっさと立ち去ろうとした。駅員が彼をひきとめた。 「ちょっと待って。彼女が回復したとき、君の名前を知りたがるかもしれない。 名前と連絡先を教えてくれるかな?」 しかし、彼はふわりと笑って答えた。 「名乗るようなことはしていません。ボクは、当たり前のことをしただけですから」 さて、どうでもいいが、ここでケーイチ生のごく一般的な通学風景を紹介しよう。 駅のホームに入り、電車に乗り込むための列を見つけると、彼はその最後尾に並んだ。最後尾といっても、それは彼の中での最後尾であり、つまり彼の解釈によるとより白線に近い方が列の末尾であり、ホームの内側の方が列の先頭なのである。彼は電車に乗り込むと、もっとも近い席に座っている高校生をチラッとみた。(「ギロッ」ともいう。)高校生は、彼の襟の校章を確認すると、すばやく立ち上がった。その横にいたOLも立ち上がった。彼は二人分の席に腰を下ろした。そして脚を広げると、うっかり隣にいたお婆さんの足を踏んづける形になってしまった。慌てて足をどけると、お婆さんがなぜか立ち上がった。彼は三人分の席に座らせてもらった。 彼は胸ポケットからiPodを取り出した。彼のマイブームはサイモンアンドガーファンクルだ。彼がしみじみと音楽に浸っていると、肩を叩かれた。前に立ったサラリーマンが、「うるさい」とジェスチャーでうったえているようだ。彼は イヤホンを外し、素直に謝った。 「すぅー、いぃー、まー、せぇー、んー、でぇー、しー、たぁーっっ!」 彼は再びイヤホンを装着すると、思った。こんなにいい音楽なのに、なぜ大人はわかってくれないんだろう。そういえば、いい音楽でも中途半端にしか聞こえないと雑音にしか聞こえないらしい。だったら、ちゃんと聞いてもらえばいいじゃないか。彼はiPodの音量を上げた。 とにかく、ケーイチの中じゃ先程の学生の良い子っぷりがどれだけ奇跡かわかってもらえたと思う。 1限終了のチャイムに間に合えば遅刻にならないケーイチであるが、彼は今始業のチャイムに間に合うべく通学路を走っていた。彼のクラスは2年A組。三階の一番端の教室だ。 そして彼は、遅刻者の礼儀に乗っとり、前方の扉を開けた… 黒板消しが降ってきた。黒板消しが彼の頭に直撃して髪が真っ白になった。その上足元のバケツを盛大にひっくり返してズボンをびしょぬれにしてしまった。 クラスメートは、トラップに引っ掛かったのが女性でないと知るや罵声をとばし た。 「テんメー!!!勝手にひっかかってんなやグズ!」 「オレらの甘い計画がオジャンやろが!!」 「スケスケおパンツをかえせー!」 「ごめん、ごめん……」 彼が前髪の粉を払いながら立ち上がる。 教室がシン…と静まりかえった。 背後から、教師と転校生が入ってきた。 教師は、びしょぬれの床と粉だらけの生徒を見ても特に何もコメントしなかった。 「今日からこのクラスに入る転校生だ」 教師の後ろに立っていたのは、この学校にあまりにも不釣り合いな、ごく普通の女子高生だった。 進む |
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