たんぼくんとイネ子ちゃん

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zoom RSS かにさんとのタイマン小説バトル

<<   作成日時 : 2010/07/01 23:16   >>

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駅のホームで終電を待ちながら、僕は携帯をカチカチと触って耳に押し当てた。
プルルル…
と呼び出し音が何回か鳴り、

『白石れす。たらいま留守にしております。ピーという発信音の後にメッセージをどうぞ。アハッ』

僕はそこで電話を切った。
最後にかすかに聞こえるの『アハッ』は、彼女が音声を録音した時に、受話器に向かって一人でしゃべっている照れくささからだろう。(消せよ。
「だ」行の音が「ら」行に聞こえる酔っ払いみたいな喋り方は彼女のデフォルトだった。

もう一度電話するか、と思っていると、
終電が来た。
電車の中がコンビニのように明るくて眩しい。
『ドアがしまります...ご注意ください...』


白石三月(ミツキ)。
僕の彼女。
先週死んだ。



『せんぱい』
僕には不釣り合いにミツキはかわいかった。
『何してるんれすか?』
茶色いウェーブの髪が僕の腕を申し訳なさそうにくすぐる。
ゲーム、
と見ればわかることを答えると、
『あー、わたしも…、』
『ミツキもやる?』
『いいの?』
ミツキは意外と、物怖じするタイプだった。僕に対しても。
『早くとべよ。BボタンだよBボタン』
『れも、タイミングが…あー!』
『馬鹿ww』

『なにしてるの?』
『先輩、ねえ?』
『なにが好き?』
人のことはよく聞くけど、自分のことは話さなかった。自分の気持ちも話さなかった。
だから僕はわからなかった。
ミツキがなぜ死んだのか。


僕は終電に乗らなかった。
今降りたばかりのオッサンが「いいの?乗らなくていいの?」という目で僕を見ている。
僕は乗れなかった。
僕は帰れなかった。

もう一度電話をかけた。

『白石れす。たらいま留守にしております。ピーという発信音の後に…』


プツッ
『白石れす。たらいま留守に…』
プツッ
『白石れす。…』


僕は感じることができた。
僕の帰りを待っている人の存在を。
照れ臭そうに笑う声を。
家電のテープに書き込まれた雑音だらけの声を。
ミツキ。

『……という発信音の後にメッセージをどうぞ。アハッ』
『ピ―――』


「ミツキ?僕だけど。悪い、今日も終電逃しちゃって、帰れないんだ。明日はきっと帰るから、待っててくれるか?明日は土曜だからどっか食いにいこうよ。回転寿司とか。それと言いたいことがあるんだ。いつも言えなかったこと。愛してるよ。愛してる。愛してるミツキ。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。もっとたくさん…言いたいんだ……言えばよかった…ミツキ…」

何が君を孤独にさせていたのか僕にはもはやわからない。
わかるのは、

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